■ベターハウスの不動産仲介業者の「ホンネ」第3回:不動産仲介業者の便利屋化
「不動産仲介業」→「アフターサービス」
前回、不動産仲介業者におけるアフターサービスの背景と現状についてお伝えした。「不動産仲介業」としての仕事は、ある程度システマティックに動く。「顧客からの問い合わせ」→「顧客の要望から物件のリストアップ」→「物件案内」→「賃貸借契約の締結」→「入居」という流れに沿って動くのが基本である。このあと、住環境に対する諸問題への解決をはかるのが「アフターサービス」である。
現在、日本人駐在員を相手にする仲介業者のほとんどが、アフターサービスを実施している。アフターサービスは、熾烈な競争の中で「低料金」「迅速」「明確」をキーワードとした次のステージに向けた動きが活発化するだろう。しかし、もうひとつ忘れてはならない視点がある。
「アフターサービス」≒「便利屋」
上海のみならず、中国各地で日本人を相手とする仲介業者は、「アフターサービス」という名の、響きだけは美しい事実上の「便利屋」化が進んでいる感がある。誤解を恐れずにいうと、「便利屋としての仲介業者」から「仲介業者としての便利屋」になった、という感があるのである。
このような状況になった主な理由には、(1)駐在員からの要望の数が増え、さらに要望が複雑化、多様化した、(2)仲介業者の林立化によるサービス競争の激化、(3)不動産市場の景気悪化にともない、買い手市場と化した、(4)アフターサービスが市場で標準化された、(5)日本で暮らすより賃料が高いため、顧客をVIP扱いしなければならない風潮がある、(6)駐在員の削減、長期滞在の減少などによる需要の低下、などが挙げられるだろう。
本来の「仲介業」としての仕事から「便利屋」としての仕事へと比重が移っていったことは、「ビジネスチャンス」ととるか、「自分の首を絞める」ととるかで見方がわかれる。
仲介手数料のほか、さらにサービス料を獲得できるという点では、競争にさらされつつも有益なビジネスチャンスであり続ける。一方、あまりにも顧客からの要望が多い場合は、新規顧客の獲得を躊躇させる一要因となる。
アイデンティティ・クライシス
便利屋傾向が強まる中、仲介業者の内部では、「ウチの会社は仲介業者なのか、便利屋なのか、いったいどっちなんだ?」という、ある種のアイデンティティに対する危機が生じている。
仲介業者の中には、「仲介業者としての便利屋」に成り下がるのを嫌う態度をとるものもいる。一方、少しでも顧客を獲得し、サービス料を獲得したい仲介業者の中には、「仲介業者としての便利屋」でも構わないと考えるものもいる。「何でもやらせていただきます!」というノリの仲介業者は後者にあたる。逆に、「うちではそのようなことはできません」といわれた場合は、あくまで「仲介業者」としての仕事に固執しているということになる。
不動産市場の景気悪化は、必然的に仲介件数そのものを減少化させる。そのため、生き残るためには、便利屋としての機能の充実をはからざるをえない状況もある。いずれにせよ、仲介業者は、アイデンティティの保持/変容/多様化を求められているのは間違いないだろう。
「高クオリティの物件」の紹介が基本
便利屋としてのアイデンティティが拡大する背景にあるのは、「言葉が通じない上海という外国の地で安心・安全を求める」という根強いニーズのほか、「建築のクオリティ」の問題がある。
低クオリティの物件の場合、水漏れ、騒音、セキュリティなどの問題が常に生じる。このような物件を紹介した場合、必然的に、便利屋としての仕事が増大する。問題の多い物件を紹介し、その分をアフターサービスでカバーするという強引な手法すら存在する。アフターサービスで対処できないような大きな問題が起きた場合は、お手上げという事態に発展し、生活に支障が出る可能性がある。
もっとも、高賃料の物件が必ずしも高クオリティの物件であるとは限らない。すなわち、賃料とクオリティは正比例の関係で動いているわけではない。低賃料の物件でも、問題が少ない物件も多数存在する。重要なことは、仲介業者に顧客が安心して暮らせる物件を紹介する能力があるかどうか、ということである。物件を精査する能力は、便利屋としてのそれではない。逆に、便利屋の能力ばかりを追いかけると、本来の仲介業のクオリティを下げることにもつながりかねない。
便利屋化傾向が強まるのは、それなりのニーズと問題が存在するからである。しかし、実際に暮らす住人にとっては、できるだけ便利屋としてのサービスを受けたくないというのが実情ではなかろうか。アフターサービスを利用しないということは、問題がないということである。まさに、「手紙がないのは良い知らせ」というわけである。
顧客側から見れば、「便利屋としての仲介業者」の数が増えると、よりよいサービスの提供を受けることができるチャンスである。しかし、サービスに眼を奪われることなく、高クオリティの物件を精査/紹介できる仲介業者の能力に対しても厳しい眼で見る必要があるだろう。
第3回:不動産仲介業者の便利屋化
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